第5章旅人の正体
王様は記憶を失ったとはいえ、さすがに、いまの姿が本当の自分ではないことはわかります。
「これはいったい、どういうことですか……?あなたは…?わたしは…、だれなのですか。教えてください、なにも思い出せないのです」
「うぷぷぷぷ。お前は、わしが出した『なぞなぞ』にこたえられなかったのじゃ。だから、フライパンの呪いで、『なぞなぞさん』に変身させてやった。お前たちは、これからずーっと、その哀れな姿のままじゃ。うぷぷぷ、愉快じゃのう」
「なぞなぞさん、そんな……。“さん”も名前のうちなのですか?」
「……そして、わしは『なぞなぞ魔王』。なぞなぞの呪いで、この国を、そしていずれは、世界中を支配するのがわしの目的じゃ。うぷぷぷぷ」
魔王は王様の疑問を無視して話を続けますが、王様の耳には入りません。
「呪いだなんて……。私たち家族を、もとの姿に戻してください!」
王様は叫びましたが、魔王は答えません。
「うぷぷぷ。では、ごきげんよう」
魔王がその場で大きく手を振り回しながら、『オーイー!ディープスー!!』と呪文を唱えると、周りに白い煙が立ち込めます。そして、やがて煙が消えると、魔王の姿も消えてしまったのです。
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